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「カリフォルニアの山火事の主因は落雷」


1.gettyimages

                     写真:(www.gettyimages.co/
7月末に始まった、カリフォルニア州の山火事は9月半ば現在、すでに15,000平方㌔分焼き尽くした。この面積は米国のコネティカット州の面積に匹敵する。コネティカット州は米国で最も小さい州であるが、日本と比較すると、本州で最も広い岩手県と同じ面積である。
今月15日のカリフォルニア州消防局(CAL FIRE)の発表によると、これまでの州内で発生した28か所の大規模森林火災現場で、19,000名の消防士が消火に従事したが、4200の建造物が被害に遭い、26名の犠牲者が出た。今後も「高温低湿」が予想され山火事発生の危険は継続するので、州民への電力供給の制限も続くと思われる。とにかく、隣国メキシコから消防隊が応援に駆け付けたほど、事態はひっ迫している。
なお、カリフォルニアの夏季の山火事は、日本に台風シーズンがあるように毎年の年中行事でもあるが、今年の夏は異常に高温だったこともあり、その頻度は度を越している。


2.latimes.com

                    写真:(www.latimes.com)
今月14日、トランプ大統領は北カリフォルニアのサクラメント市郊外のマクレラン公園を訪れ、200人以上の被災者を救出したカリフォルニア州兵7人を表彰した後、州知事、連邦、州政府の消防当局から山火事に関する説明を受けた。この際、ギャビン・ニューサム知事は連邦政府からの緊急支援に対して感謝の意を伝えた。
しかし、ギャビン・ニューサム州知事とロサンジェルス市長のエリック・ガーセッティ(ともに民主党員)はこの猛烈な山火事はトランプ大統領が地球温暖化説に懐疑的なことによって、政府の気候変動への対策がおろそかになっている、と非難することは忘れなかった。これに対し、トランプ大統領の同州の不十分かつ不適切な森林管理こそが問題であると応酬した。


ある地域では数年にわたる干ばつが続いている一方、他の地域では大雨が降って洪水になる。これは明らかに地球温暖化の影響であり、その対策を怠ったのは、トランプ政権である、とロサンジェルス市長は、CNN-TVのJ.タッパーの番組「国の現状」内でもコメントした。


3.nbcnews

                     写真:(www.nbcnews.com)
一方、カリフォルニア消防局幹部は、8月21日の記者会見で、山火事の原因について次のように述べている。「通常山火事は草刈り機、芝刈り機、チェインソー等の機具が原因になるケース及び放火、ゴミ焼き、BBQ等の不始末による人災がその原因とされている。しかしながら、今回の山火事はこれら人為的原因による件ももちろんあるが、大部分は「落雷の直撃」によって起こった。8月中、同州内で少なくとも12,000件の山火事が落雷(lightning)によって誘発された」と発表した。
このうち、28件が大規模森林火災に発展したのだった。


ここで注目すべきは、当局が「雷雨」という語を使っていないことである。日本では落雷に雷雨はつきものであるが、米国は違うのである。8、9月のカリフォルニアの気候は、ぶどうの栽培に理想的な、地中海性気候特有の高温低湿即ち「乾燥して暑く」雨はほとんど降らない。
しかし、「落雷」は頻繁に発生する。これはカリフォルニアのモントレイ市に住む孫娘に確認したことだが、同地の落雷の多くは雨を伴わないので、高い木に落雷すると、直ちに発火し山火事が発生するのだ。雨を伴わない、稲妻、落雷を英語で「lightning storm-稲妻嵐」と呼ぶ。


4.holliwood.unlocked - コピー

                     写真:(www.bbcnews.com)
さて、先日孫娘に聞いた、カリフォルニアの山火事の惨状は想像を絶するものがある。以前、山火事で空が黒くなったことは聞いていた。ところが、9月に入って、孫娘の家の近くに火事が発生すると、炎で空が赤く染まった、という。これを聞いて、第二次大戦末期の昭和20年3月10日の米軍による東京大空襲を思い出した。あの夜、東京の空は真っ赤だった。
孫娘によると、日中、赤い雲間から太陽が顔を出すことがあると、屋内の床に映る光線が黄色っぽい白色ではなく、赤黒く映るというから不気味である。


5.ocregister.com

                     写真:(www.ocregister.com)
この山火事現象は何もカリフォルニア特有な現象ではなく、夏季「高温低湿」気候のテキサスでも「山火事シーズン」という言葉があるほどの、遙か昔からの年中行事になっている。従って、山火事シーズンが終了したテキサスは現在、200名の消防隊員をカリフォルニアに派遣している。

今回のカリフォルニア州の山火事は例年より大規模ではあるが、その原因を地球温暖化、或いは気候変動であるとする、州知事やバイデンの発言は、何事もトランプ政権の失策にしようとする、民主党の我田引水的発言と評判が悪い。
2019年11月5日-アメリカは4日、気候変動への国際的な取り組みを決めた2015年の「パリ協定」 からの離脱を正式に国連に通告した。これにより、アメリカは世界で唯一同協定に参加していない国となる。これが米民主党は気に食わないのである。
今年は日本でも梅雨の終わったころ、雷を伴う集中豪雨が各地で発生して、多大な被害をもたらしたが、これを気候変動と結び付けた議論は起こらなかった、と思う。


9月14日、バイデンは悪乗りして同氏の地元である、米国東部のデラウェア州にある、自然歴史博物館における選挙演説で、トランプ大統領を米国西部の「山火事発生の元凶であり、同氏を山火事の放火犯」と非難している。正確には「climate arsonist」と表現したのだが、arsonistとは放火犯の意である。これは「climate activist-気候変動活動家」から思いついた、同氏の造語だろう。それにしても、いかにトランプが憎いとは言え、放火犯とは言い過ぎだとは思いませんか、皆さん。
(終わり)