メキシコ小話OK

「奥さんは今どこにいるの?」
 

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       写真:(https://www.stockphoto.com)

【蛇足的まえがき】

 事故に遭遇した際、都合よく医療関係者が近くにいてアテンドしてくれる、というテーマの小話は人気がある。今週の小話はメキシコものだが、これがアメリカ小話だと趣が違ってくる。

こんな調子である。

ゴルフ場で隣のホールから飛んできたボールに直撃された男は、両手をまたぐらに当てて、芝生の上をのたうちまわっていた。そこへ、ボールを打った女性が駆け寄ってきて、「私は理学療法士です。痛みを和らげて差し上げましょう」と言って、男を横たわらせると、ズボンのジッパーをおろして手を中に入れて、男のあそこをマッサージし始めた。

しばらくして、女性は優しく男に尋ねた。「ご気分はどうです?」

男はまだ痛みにあえぎながら答えた。

「最高だよ。だけど……、君のボールが直撃したのは俺の親指なんだよ」。

 

では、同じようなケースがメキシコで起こると、どうなるか?下記の一笑一若・メキシコ小話「奥さんは今どこにいるの?」をE N J O Y !!!  (テキサス無宿記)

 

一笑一若・メキシコ小話「奥さんは今どこにいるの?」

買ったばかりのホンダ1000ccをハイウエイで初乗りしていると、突然一頭の牝牛がハイウエイを横切って来やがった。俺は避けようとしたが、コントロールを失って転倒してしまった。運悪く、いや運良くだったのか、バイクは道路わきの深い排水溝に飛び込んで止まった。体中が痛んだが、やっとの思いで排水溝をよじ登って道路脇まで上がった。

 

すると、地獄に仏で一台の赤い車が止まってくれた。車から黒いドレスのすごい美人が降りて来ると、路肩に這いつくばっている私に「大丈夫ですか?車にお乗りなさい。家にお連れして傷の治療をしましょう」と優しく声をかけてくれた。

 

俺は「ありがとう。でも女房が気を悪くすると思うので遠慮します」と言った。

「ご心配なく。私は看護師ですから、傷の具合を見てあげましょう」と女性は言った。

 

俺は気が動転しているし、体中が痛かったので車に乗ることは乗った。だが「女房が気を悪くすると思うので、女房に知らせたいと思います」と俺は言い張った。

だが、近くで見るとすごい美人の看護師さんに「あなたは奥さん思いなのね」と言われると、それ以上断りきれず好意を受けることにした。

 

彼女の自宅に着くと、彼女は綿密に傷を調べたうえ、消毒して治療してくれた。

治療が終わると、彼女は手早くつまみを用意しウイスキーのビンを持ってきて、グラスに注いでくれ、二人で2,3杯飲んだ。

 

「治療してくれたうえ、ウイスキーまで頂いて感謝するよ。だけど、女房が気を悪くすると思うので…」とまた俺は言い張った。

 

親切な看護師さんはウインクすると、「大丈夫よ。奥さんは気が付きませんよ。もう少しここに残って瓶を空けちゃいましょうよ」

と言われると席を立つわけにいかず、俺はまた腰を据えてしまった。

 

ウイスキー瓶が空になりかけたころ、彼女は俺に「それはそうと、今あなたの奥さんはどこにいるの?」と訊いた。

はっと我に返った俺は「多分、まだ排水溝の中だと思うよ」と答えた。

 

お後がよろしいようで…。