アメリカ便り

アメリカ便り Letters from the Americas 様々なアメリカ&メキシコ事情と両国の小話

2009年06月

ブログを開設しました
「アメリカ便り」を書き始めたのはイラク戦争が一段落した2003年ころで、「女性兵士の
前線派遣」が第一回のタイトルでした。
友人たちのご厚意で、「Grand’ma Shigekoの玉手箱」、「早大海外移住研OB/OG H.P.」,
ブラジル発信の「私たちの40年」が発表の場を提供してくれました。
そして6年後の今「めくら蛇に怖じず」で、自前のブログを開設しました。
今後も「アメリカ便り」及び「小話、Joke&Chistes」を書き続けていきたいと思いますので宜しくお願い致します。

今回は「麻薬密輸は潜水艦で」をお届けします。

麻薬密輸は潜水艦で
ワシントン・ポスト紙、メキシコ・シティー支局は「麻薬組織は太平洋上を定期的に運航する潜水艦による麻薬密輸を開始した」と報じた。
麻薬組織の国際分業化が進み、コロンビアの組織はコカイン製造に特化し、製品をメキシコに送る。
これを受けるメキシコの組織は最大市場である米国への密輸出総代理店という具合である。
そしてコロンビアからメキシコへは、潜水艦で「商品」が輸送される。
という驚くべき実態が明らかになった。
以下は「麻薬潜水艦」の実態についての報告である。

米国の麻薬取締官たちは「麻薬組織がコカインを輸送するために潜水艦隊を建造中である」
と聞いた時ジョークだろう、と思ったそうだ。
ところがジョークではないのだ。
米国の捜査当局幹部は「コロンビアから米国に密輸されるコカインの三分の一以上は
潜水艦によって運ばれている」と語った。

二年前、この途方もない計画はまだ実験の段階だったが、今やこれらの奇妙な準潜水艦は
麻薬違法販売の主要な運搬手段になりつつある。コロンビア海軍によると、これらの
準潜水艦艦隊はメキシコの強力な麻薬組織への何百トンものコカインを輸送する太平洋ルートの主要な運搬手段になった、と言う。
その上、潜水艦建造業者は「リモート・コントロールによるモデル」も開発中という。
これは乗組員無しを意味する。艦内にはコカインであれ何であろうと、「麻薬類」だけしか積んでいないことを意味する、
とUS DEA(米国麻薬取締局)の元長官マイケル・ブラウンは語った。
この麻薬潜水艦は普通のディーゼル・エンジンを動力源とし、単純なファイバー・グラス
の船体を持ち、コロンビアのジャングル内の秘密の造船所で建造される。
米国当局者の推定によると、今年70隻以上の麻薬潜水艦が進水する、と推定される。
この70隻で米国市場で数十億ドルの商品価値を持つ380トンのコカインを運搬出来る。
この種の潜水艦が次世代の麻薬密輸の主力輸送手段になるだろう、とフロリダ州タンパで「麻薬担ぎ屋ならぬ麻薬船員」を追い掛ける連邦検察庁のルディー氏は語った。

これ等の潜水艦は、米海軍が持つ対潜水艦戦術の最先端技術を以ってしても傍受が困難な高度な技術の機器を搭載しているので、米海軍の探索網を易々とくぐり抜けてしまう。
「まるで太平洋の真中に浮いている丸太を見つけるようなものだ」とDEA(米国麻薬取締局)の係官は嘆いたものだ。

米海軍はコロンビア海軍との共同作戦によって、2006年以来115隻以上の麻薬潜水艦の形跡を探知した、と言う。
2007年以降、両国海軍は22隻以上の麻薬潜水艦の乗員を洋上で逮捕している。
今年に入ってからも既に6名の乗員を逮捕している。
コロンビア海軍も1993年以降、独自に33隻の麻薬潜水艦の無線を傍受、または船体を発見している。

米海軍幹部は「これ等のごろつき共の艦隊」がテロリストに利用され凶悪な貨物を積んで、
米国本土への侵入に使われはしないかと、危惧しているのももっともである。

日中は眠れるクジラのように漂流する潜水艦
麻薬潜水艦は完全に潜航せずに、水面を滑るように航行する仕組みになっている。
艦は夜間高速で航行し、日中は眠れるクジラのように海面を漂流する。
夜陰に乗じて、麻薬潜水艦はコロンビアの河を滑るように抜け出して海に出る。
大よそ10日後、グアテマラ近辺の中米の海岸の待合せ場所に着き、コカインを荷揚げした後、麻薬潜水艦は沈没させてしまう。使い捨てなのである。
コロンビアの密輸業者たちは、最初「棺おけ船」と呼ばれた鋼鉄製の潜水艦を試験的に使用していた。
しかし試行錯誤の末、彼らは急速に艦の性能を向上させ、最新の潜水艦は高度の工夫が施されている。
艦の乗り心地は良くないが、航行性能は大幅に改良された。まず積荷の積載量が増加した。
燃料補給無しに、数千マイル航行可能になった。

そしてカリブ海と東太平洋を管轄する米国沿岸警備隊の麻薬対策本部のニミッチ隊長によると、
新型の潜水艦はレーダーによる探知が非常に難しい、と言う。
ニミッチはフロリダのキーウエスト港の麻薬対策本部に係留してある、
彼らが昨年メキシコ、グアテマラ沖合300キロで捕獲したBig Foot二世号と呼ばれる「麻薬潜水艦」についてこう語った。
この艦には4名のコロンビア人が乗り込み、6.4トンのコカインを積んでいた。
因みにこの積荷は一億ドル(100億円)の価値があるそうだ。
潜水艦は全長18Mts。 エンジンの排気ガスが高温であると赤外線が発生するので、水冷式エンジンを採用。
更に冷却装置付きの排気消音器を装備している。音と熱に反応するレーダーで発見されないための工夫である。
艦体はカモフラージュのため青灰色に塗装され、司令塔はレーダーから探知され難くするため、斜めに突き出ている。
そして最新型の麻薬潜水艦は燃料補給なしに5,000キロ航行可能である。

最後にニミッチ隊長は、こう言った。
「皆さんは、こんな潜水艦がハドソン河を遡っていくのを見たくないでしょう」

沿岸警備隊の幹部はこのコロンビア製の潜水艦は凡そ百万ドルの建造費が掛かる、と推定している。
又コロンビアの係官は何名かの元海軍関係者が潜水艦のデザイン、建造、操船に係わっている、と観測している。

コロンビア海軍バレーラ提督によると、麻薬潜水艦は通常4乃至10トンのコカインを積載している。
普通、艦には船長、機関士、ブラセーロ(出稼ぎ)と呼ばれる操舵手兼水夫兼荷役の他に積荷のオーナーの代理人である第四の男が乗艦している。
何しろ100億円以上の積荷であるから、行先を見極める必要があるのだ。
海軍幹部によると、乗組員の報酬はすこぶる良く、一航海で50万ドル(5,000万円)
になるそうだ。言うまでもなく、大変危険な仕事である。
艦は荒れ狂う大洋を照明も点けずに航海し、補助燃料タンクや積荷であるコカインが波によって移動するので危険この上もないのである。
しかも船室は狭苦しく、暑い。

これらの潜水艦は隊を組んで航海し、沿岸警備船や偵察機の接近を監視するため、トロール漁船を装った護衛船のエスコートを受ける、と言う念の入れ方である。
また麻薬潜水艦の乗員たちは無電はめったに使用しないし、使ったとしても暗号で話すのが普通である。
最近まで、例え米国、コロンビア当局が麻薬潜水艦を捕獲したとしても、乗組員がコカインを海に破棄してしまえば、当局は彼らを逮捕出来なかった。

麻薬潜水艦は沈没させるように建造されている。彼らが艦底のバルブを開けると、何トンもの海水が艦内に浸水して一分、長くとも一分半で潜水艦は沈没するのである。
潜水艦と証拠の薬物は海の藻屑となってしまうため、対麻薬潜水艦追跡作戦は水難救助作戦に様変わりしてしまうのである。

米、コロンビアの麻薬取締官たちは、こうして「海上のネズミ捕り作戦」で麻薬組織側に苦汁を飲まされ続けていたのである。
証拠物件である薬物が無ければ、密輸業者である船員を逮捕出来ないからである。
少なくとも最近、沈没して海面を漂っていた8人の潜水艦乗組員は米国沿岸警備船に救助されて、何等の咎めも受けずにコロンビアに送還されている。

このようなケースに対応出来るように、昨秋麻薬密輸船取締り法が米国上下院で可決された。
この法は無国籍船が公海を警備船の探知を逃れながら定期的に航海することを「犯罪」と認定する法律であり、刑罰は最高15年である。
既に新法によって、三名の麻薬船員の裁判が行われた。内二名は無罪の申し立てをして控訴中であり、一名は有罪が確定した。
コロンビアでも同じ内容の法案が国会に提出されて、成立を待つばかりとなっている。

潜水艦建造業者を逮捕!
昨年の夏、コロンビア警察は「技師」のあだ名を持つグスターボ・アドルフォ・デ・ヘスス・ガルシアを逮捕した。
同人は潜水艦製造組織の中心人物と断定された。
同時に逮捕されたロペ・アントニオ・ロペスはメキシコの麻薬組織への潜水艦によるコカインの大量密輸の罪を問われたものだったが、潜水艦建造にも関与していたことが判明した。
コロンビア当局の発表によると、ガルシアとロペスはレーダーによる発見を難しくするステルス技術を採用した、洒落たデザインの大型船の建造に全力を尽くしていた、と言う。
また二人はリモート・コントロールで動く無人潜水艦も開発中だった。

最近、獄中のロペスはワシントン・ポスト紙との電話会談で、「私は潜水艦利用の密輸には関与していない」と語ったが、建造に関しては否定するどころか、熱心に解説したと言う。
ロペスは2007年にヴェネズエラ政府に複数の釣り船を売った、と自供した。
この仕事のためにディーゼル・エンジンをパナマ市に買いに行った際、或る友人からメキシコの顧客との昼食に招かれた。
この席で、ロペスは小型潜水艦建造を依頼された。
メキシコ人たちはファイバー・グラスの船体を作る技術者を探していたのだった。
メキシコ人たちが「麻薬組織の人間だ」と気が付いたロペスは、会合を途中で打ち切ってレストランから立ち去った、と記者に強調していた。
しかし、ロペスは今年5月、コロンビアから身柄を米国司法当局へ引き渡された。

無人島の美女
 無人島に一人の美女と二人の英国人が漂着した。英国人たちは紹介してくれる人がいないので、互いに口も利かない。従って、何事も起こらない。
今度は無人島に一人の美女と二人のイタリア男が漂着した場合。美女を争って二人のイタリア人は命を賭
けて戦った末、生き残った男が美女を得た。同じシチュエーションで男性がフランス人の場合、一人は夫になり、もう一人は愛人となって二人とも美女とよろしく過ごす。
さて、同じシチュエーションで日本人の場合はどうなるか?
二人共大慌てで東京本社にメールを送って、上司の指示を仰ぐ。


同じ日にもう一つ小話を送ってしまいました。E N J O Y !!!

                         浦島太郎

先日、ある宴席で幇間の小話と言うのか、漫談を聞いた。中々達者な芸で大変面白かった。驚いたことに、彼が語った小話のうち二つがメキシコで聞いたことのあるものだった。挨拶に来てくれた幇間氏み訊いてみると、そのネタが外国のものとは知らなかった、と本人も驚いていた。どうやら、小話、英語のJoke
スペイン語のChisteにも国際的交流があるようで愉快だった。
しかし、これは海の向こうでは当たり前なことなのだ。と言うのは、私は同じネタが三ヶ国で自国人を主人公として語られている小話を知っているからだ。
では、早速ご披露しよう。

天地創造
 天地創造のとき、神様がある地域に長く美しい海浜、肥沃な平野、温暖な気候、豊富な地下資源をお与えになっているのを見て、天使たちが口々に「神様、これはやり過ぎですよ」と意見を述べた。
すると、神様は「心配無用。そこにはメキシコ人をいれるから」と仰った。

 この小話はメキシコ人の代わりに、ブラジル人、アルゼンチン人が入るバージョンも夫々の国で通用している。この三ヶ国の住民たちは「自らが怠け者であることを自認し、人生は楽しむためにあり、必死に働いて金を貯めても、墓場には持って行けない」のであるから、生きている内に大いに楽しもう、という訳なのだ。更に神様が彼らをお心に掛けて下さったことが、嬉しいのである。
そういう彼らの生き方の潤滑油になるのが、小話、Jokes & Chistesである。日本の小話と違うところは、彼らは小話を聞くだけではなく、自ら家庭で、職場で、取引先で、酒場で、面白可笑しく、新ネタを披露して、家族、恋人、友人、同僚、隣人たちを楽しませる点である。

 人生に関するあらゆる現象がテーマとなり、神様から罪人に至るすべての階層の男女が主役となる、小話は欧米やラテンアメリカ諸国では、生活に溶け込んでいる立派な文化である。子どもたちが小学校に入学すると、早や小話の洗礼を受ける。子どもたちが語るのは、無邪気で可愛いものばかりである。一方、大人たちが喜ぶのは、政治批判ものと艶笑小話である。前者は日本に住む皆さんには縁遠いものであるので、小欄は私の第二の故郷であるメキシコの艶笑小話を中心に各種の小話をご披露して行こう、と思う。
E N J O Y !!!


第一回目の小話はお気にめしましたか?
コメントをお寄せ下さい。

           浦島太郎

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メキシコ公式訪問のオバマ大統領、銃器規制に意欲示す


写真説明:テキサス州、ヒューストンの公認銃器店。後ろの銃はライフル及び散弾銃(ショットガン)
銃器店は全米で78,000店認可されている。(写真はニューヨーク・タイムズ紙による)
4月16日、バラック・オバマ大統領は隣国メキシコを公式訪問した。
ヴェネズエラ沖にあるトリニダ・トバゴ国で開催されるOAS(米州機構)サミットに出席する途上、
急遽メキシコに立ち寄ったものだ。
現在、米国とメキシコの間には、非常にデリケートな案件である麻薬犯罪関連の問題が横たわっている。
南米、メキシコの麻薬犯罪組織はメキシコを経由して大量の麻薬を米国内に送り込んでいる。
一方、米国からメキシコへは大量の銃器が密輸入されているのだ。
その米国製銃器を使っての麻薬犯罪組織による殺人事件の被害者は現メキシコ、
カルデロン大統領の就任後18ケ月間に10,000人を超えている。
しかも麻薬犯罪組織による殺人、暴力事件は米墨国境地帯に多発しているため、
米国も対岸の火事と見過ごすわけにいかなくなってきたのだ。
被害者の内訳は麻薬犯罪組織構成員と警察、検察関係者が多く、
思いあがりも甚だしい「殺し屋たち」はこの種の殺人を「処刑」と称している。
メキシコ・シティでカルデロン大統領と会談したオバマ大統領は、
麻薬犯罪組織との戦争に両国が協力すると共に、
米国は米州銃器違法売買禁止協定の締結に努力する、と確約した。
同時に大統領は上院で十年以上棚上げされている同法の早急な批准を上院側に要請した、とも語った。
「自衛のための銃器携行権を認める米国の法律」
を良いことに麻薬犯罪組織は手軽に強力な銃器をテキサス等の米墨国境の州で大量に購入出来、
しかもやすやすとメキシコに運び出せるのである。
更にオバマ大統領は2004年に期限が切れた
「攻撃用銃器販売禁止法案」の再施行を議会に働きかけたい、
との意向も表明した。本気なのである。 
米国の隣国であるメキシコの輸出の80%が米国向けであり、
メキシコの人口の10%は米国に居住しており、
おまけに、二人に一人のメキシコ人は米国に親類か知人を持っている、
という統計があるほど両国の関係は深いのである。 
しかし数年来、両国の関係は麻薬、
移民問題等を巡って両方が非難し合うとげとげしい関係になっていたが、
オバマ大統領のメキシコ訪問を機に、両国関係に新しい時代が来た、
とメキシコ側も米国の協調姿勢を歓迎している。
オバマの対隣国政策はブッシュ時代とは明確な変化が見られるが、
カルデロン大統領はこの期待に応えられるか、注目したい。

銃器販売の実態
では米国の銃器売買の実態を見てみよう。全米50州中、
40州は銃器の携行許可が簡単に入手出来る。
勿論、米国籍の成人に限られており、犯罪歴が無いことが条件である。
州によっては精神科医師の診断書提出が義務付けられている。
残りの10州の内8州も条件は厳しいが許可証は入手可能である。
イリノイ、ウイスコンシン両州は銃器の携行はもとより、売買も禁止されている。
イリノイ州はオバマ大統領の地元であるため、銃器携行禁止が全米各州に及ぶのではないか、
と取り沙汰されている。
 銃器の販売にはATF(Bureau of )Alcohol,Tobacco,and Firearms{アルコール、タバコ、銃器局} の
営業許可書が必要であり、
全米で78,000店が公認されている。
その内、テキサス、アリゾナ、ニュウメキシコ、カリフォルニア4州のメキシコ国境地帯には15,000店、
テキサス州ヒューストン市付近には1,500店の銃器店が存在する。
この8万店近い銃器専門店を監督するATFは連邦と州単位の組織がある。
ATFはTVシリーズ「アンタッチャブル」のエリオット・ネス氏がシカゴのギャング相手に戦った、
あの組織の後身である。
銃器の売買は通称Gun Laws(銃器法)と呼ばれる各州の法律によって規制、管理されているが、
「ザル法」との評価を得ている。
実際の事件を例に説明しよう。
 メキシコのアカプルコで組織犯罪集団の殺し屋たちによって
ゲレーロ州検察庁の4人の刑事と3人の検察事務官が殺害された。
この事件の凶器の入手経路を調査した、
メキシコ、米国の係官たちは銃の製造番号から購入者を特定出来たのである。
ジョーン・フィリップ・エルナンデスと言う24才のメキシコ系米国人だった。

彼は20人以上のメンバーを持つ銃器密売グループの一員だった。
FBI係官によると、このグループはTexasからメキシコへ最近18ケ月間に339丁の銃器を密輸出した、と言う。
しかしこの摘発は全くのまぐれであって、普通はこんなに上手く行かないのである。
第一、殺人凶器が押収出来ることが稀である。押収出来、販売店を特定したとしても、
店側が購入者のデータを持っていないことが多いのである。
何故なら、テキサス州の銃器法はATFへの購入者のデータ報告はもとより、
保存も義務付けていないからだ。
よしんばFBIが購入者にたどり着いたとしても、本人が「あの銃は紛失しました、
または盗難に逢いました」と言えばそれまでなのだ。
また、購入する銃器が強力な軍専用タイプの銃器であっても、特別な規制は無いのである。
しかも毎日、同じ店に同じ顧客が大量の銃器を買いに行っても、売り続ける店さえある、と言う。
しかし麻薬犯罪組織側もそんな危ない真似はしない。
彼らは米国籍の不特定多数の「金に困っている男女」を集めて、
合法的に銃器を買わせるのである。一丁につき100ドルの報酬を貰えば、良いアルバイトになる、と言うものだ。
犯罪グループはこうして欲しい銃器を幾らでも獲得出来るのだ。
しかも店側がこのお客は「怪しい」と気が付いたとしても、「
ギャングの報復を恐れて」知らぬ顔をすることも多々あるらしい。
またこの国にはGun Showと言う「銃器類のフリーマーケット」があり、
全米各地で年間5,000回ほど開催される。
ここでは主に中古銃が販売され、身元確認も行われない。
実際、銃器を買うにはわざわざ専門店に行く必要はない。
大規模スポーツ店、ウォール・マートのようなスーパーでも売っているし、インターネットでも買えるのである。
兎に角銃器(Firearm)は、イリノイとウイスコンシン両州を除く全米至る所で買えるのだ
最近オバマはブッシュ時代に廃止された「麻薬、銃器、現金、入国者連邦取締局」を復活させる、と発表した。
この部署のトップは「国境のツァー(Czar)と呼ばれていた通り、国境地帯が管轄になる。銃関連の法整備と相俟って、
オバマ政権の国境問題に掛ける意気込みが分かる、と言うものだ。


メキシコ、米国の国境事情
一方メキシコは米国と違って、一般市民の銃器の携行は禁止されている。
従って、車のトランクに銃器を入れてメキシコに入国するのは明らかに違法である。
しかし、陸路米国からメキシコに入国する場合、
国境線での入国審査、税関の検査はメキシコ人、外国人を問わず無いのである。
運転者は車を徐行して係官の前を通過すればもうメキシコに入っているのだ。
旅券を見せる必要もない。米墨国境にはある特殊事情がある。
それはメキシコ側の国境地帯はタックス・フリー・ゾーンと言うか、「無関税地帯」なのだ。
ただしメキシコ内に50キロ入った、フリーゾーンが終る地点で税関、麻薬取締官の検査が行われる。
また人の通行もメキシコ側国境地帯の住民は、
目的地が国境から25マイル以内の場合はIDカードを提示するだけで米国に入国出来る仕組みになっている。
何しろメキシコ側から米国側に毎日通勤、通学する人たちが大勢いるため、この様な便宜が図られているのだ。
ところがこれはあくまでも便宜なのであって、何らかの事情でこの便宜が引込められて
、国境地帯の住人も旅券チェックを受けることがある。
また米国への入国者の目的地が国境から25マイル以上の場合は入国審査が行われる。
ただし米国国籍所有者は「米国市民です」と言えば、旅券も見ずに入国出来る。
米国側もメキシコからの買い物客は歓迎するので、大部分の旅行者は税関審査も免除されるが、
運が悪いとしっかり調べられることもある。国境線には当然のことだが、麻薬探知犬が何頭も配属されている。

巨悪への宣戦布告
実際問題として、3,000キロ以上ある国境線の何処かをくぐり抜ける麻薬運び人を監視することは不可能だろう。
米国側は国境の一部に高い塀を作っているが、税金の無駄使いだ。
一方、メキシコ政府は麻薬組織の川上を叩くことに全力を注いでいる。
麻薬生産地帯、非合法空港、流通拠点、武器倉庫の探索と破壊、資金洗浄のメカニズムの調査と麻薬資金口座の没収をはじめとして、
犯罪組織構成員と政府内の内通者の割り出しと逮捕が急務である。
それに何より大事なことは、これ以上ギャングによる殺人事件を起こさせないことだろう。
そしてメキシコの文化とまで言われる「贈収賄」を根絶させることも必須条件だろう。
しかし、犯罪組織の収賄を拒絶すると「処刑される」のだから、堪ったものではない。
「食うためなら、麻薬の売人でも、誘拐でも何でもやりかねない」極貧層の国民のための雇用創出も急務だ。
そして国民が安全に暮らせるメキシコを再生するには、麻薬犯罪組織を壊滅することこそ緊急の課題なのだ。
そうでもしなければ、貧富を問わずメキシコ人はどんどん隣国へExodus(脱出)してしまうだろう。

メキシコの麻薬犯罪組織全体の年商は600億ドル(6兆円)以上と推定されている。
彼らはこの巨大な資金と軍隊並みに装備された殺し屋を使ってメキシコ官民を意のままに牛耳って来たのだ。
これが巨悪で無くて何であろう。
幸い、オバマ大統領は隣国メキシコのカルデロン大統領の「巨悪への宣戦布告」を支持して協力を惜しまないと約束してくれたのだ。
こうして、カルデロン、メキシコ大統領とメキシコ二代目の保守政権の対麻薬犯罪組織との戦争が漸く開始された。 
(2009年4月23日)

注:メキシコ事情をご理解頂くには、「アメリカ便り」悪化するメキシコの治安(12月12日)もご覧下さい。

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