写真は筆者、メルガール博士
麻薬組織(Narcos-ナルコス)と密約?
メキシコの麻薬問題はグローバルなテーマに格上げされて来た。カルデロン(メキシコ大統領)の対ナルコス戦争は戦略の誤りによって、にっちもさっちも行かない泥沼にはまり込んで仕舞った。政府軍の技術的、ロジステック、財政的、軍事的、刑事的能力の欠如によって、戦争の継続すらおぼつかない。戦争中止は批判勢力を勢い付けるだけである。
戦争開始前に敗戦が予想されていた不可解な戦争に、カルデロンは政権の運命を賭けて仕舞ったのである。この戦争の戦果は、ナルコスによる殺人、暴力行為を増加させただけである。
写真:米国へ密輸中の200㌔以上のヘロインがメキシコ市東方で軍によって押収され、四人が逮捕された。
ストラトフォーは米国の国際情報、諜報を専門とする会社である。彼らは中東、朝鮮半島情勢やキルチネル(前アルゼンチン大統領)の別荘の寝室での出来事等を調査するのが仕事である。
社長はジョージ・フリードマンでと言う人物で、戦争、地政学に関する数冊の著書がある。この人物が「メキシコは破綻国家である」と言う説を流布したのである。
最近の国状を見れば、彼もメキシコは左程破綻していない、と認めねばなるまい。
これはメキシコ政府の手柄でも、政府が見事な戦略をたてた訳でもなく、メキシコが想像だにしなかった恩恵を、麻薬組織が施して、金融恐慌から国を救ってくれたからである。
国にとって大問題の麻薬組織が今や国家の救世主、と言われる所以である。
社長はジョージ・フリードマンでと言う人物で、戦争、地政学に関する数冊の著書がある。この人物が「メキシコは破綻国家である」と言う説を流布したのである。
最近の国状を見れば、彼もメキシコは左程破綻していない、と認めねばなるまい。
これはメキシコ政府の手柄でも、政府が見事な戦略をたてた訳でもなく、メキシコが想像だにしなかった恩恵を、麻薬組織が施して、金融恐慌から国を救ってくれたからである。
国にとって大問題の麻薬組織が今や国家の救世主、と言われる所以である。
ストラトフォーの思わせ振りな表現は狡猾だが、無分別過ぎる。例えば、馬鹿げた提案の一つは政府にチャポ・グスマン(麻薬ボス)との同盟を提案したことである。
しかし全ての提案が役立たず、と言うわけでもない。メキシコの様々な麻薬組織間の関係に関する分析は系統的であり、信頼するに足る情報に裏打ちされている。
ストラトフォールが説くように、麻薬組織の経済力がメキシコ経済に利益をもたらしているのは事実だ。この見解は新しいものではなく、以前ホルヘ・カスタニェーダとルベン・アギラールも主張していた。彼らの主張は麻薬問題解決には、先ず麻薬吸引によって起こる害毒の副作用を治療、根絶する方向に方針を変えるべきだ、と言うものだった。この方針転換こそ我々メキシコ国民が望むもので、是非今年のメキシコ革命100周年が祖国に平和をもたらして呉れることを期待したい。
ストラトフォーと我々にとって幸いなことに、麻薬組織が受取る、巨額の外貨が都合よく今回の世界金融危機から祖国を救ってくれたのである。
しかし全ての提案が役立たず、と言うわけでもない。メキシコの様々な麻薬組織間の関係に関する分析は系統的であり、信頼するに足る情報に裏打ちされている。
ストラトフォールが説くように、麻薬組織の経済力がメキシコ経済に利益をもたらしているのは事実だ。この見解は新しいものではなく、以前ホルヘ・カスタニェーダとルベン・アギラールも主張していた。彼らの主張は麻薬問題解決には、先ず麻薬吸引によって起こる害毒の副作用を治療、根絶する方向に方針を変えるべきだ、と言うものだった。この方針転換こそ我々メキシコ国民が望むもので、是非今年のメキシコ革命100周年が祖国に平和をもたらして呉れることを期待したい。
ストラトフォーと我々にとって幸いなことに、麻薬組織が受取る、巨額の外貨が都合よく今回の世界金融危機から祖国を救ってくれたのである。
ストラトフォーは重ねて言う。割拠する麻薬組織間の力の均衡が保たれなければ、メキシコの将来に望みはない、と。カルデロン政権は二つの影響力の谷間に挟まれて身動きが取れない状態にある。説明不可能な巨大な外貨準備(米国連邦麻薬取締局とストラトフォーによると350~400億ドル)と増加一方の暴力、汚職、国民のナルコスへの怒りと恐怖である。
ナルコスとの妥協点を探れ
これら二つの影響力が生みだす重圧は、カルデロンが次期大統領選挙を組織し、勝者にバトンを渡す、2012年まで増大し続けるだろう。選挙が平穏裡に終り、暴力沙汰が全国の隅々に拡散するのを防ぎ、外国からの送金が出所の詮索なしに振り込め続けるには、連邦政府が強力な権威を保ちつつ、ナルコスとの妥協点を探り、彼らと何らかの密約を結ぶ必要がある。「見ぬは極楽、知らぬは仏」と言う格言があるではないか。(訳者注:メキシコにも日本と同じ意味の格言がある)重圧を感じても矜持を保ちたい政府は、犯罪者たちとは取引しないと言う。純真さは想像力と政治的柔軟性の欠如を意味する。何も政府とナルコス(麻薬組織)がチャプルテペック城で対面して和平と親善協定を結べと言うのではない。カルロス・テイヨはミレニアムの年に、この案を提案した。だが、ナルコスと取引し密約することは共謀を連想させるとして評判が悪かった。しかし、戦争でも敵対する軍双方が合意することはあり得ないが、交信したり、規則を決め、約束を守ることはあるのだ。
映画「ゴッドファーザー」の中で、コルレオーネは米国での麻薬取引の中止を、シシリアのマフィアは家族を巻き添えにしないことを、互いに決断する密約を交わしたことを我々は知っている。
我国の場合、大げさにする必要はない。要は国民が嘆き、恐怖に慄かないようにしてくれれば良いのだ。
我国の場合、大げさにする必要はない。要は国民が嘆き、恐怖に慄かないようにしてくれれば良いのだ。
メキシコ国民がもう一度、街に、家庭に平和、静穏、安全を、取り戻せたらどんなに嬉しいことだろうか。
(終り)
(終り)
筆者略歴:
マリオ・メルガール(Mario Melgar)
メキシコ国立大学教授、同大学サンアントニオ(Texas州)キャンパス学長
法学博士、弁護士、政治評論家、趣味は1200cc級オートバイ・レース 64才
マリオ・メルガール(Mario Melgar)
メキシコ国立大学教授、同大学サンアントニオ(Texas州)キャンパス学長
法学博士、弁護士、政治評論家、趣味は1200cc級オートバイ・レース 64才