アメリカ便り

アメリカ便り Letters from the Americas 様々なアメリカ&メキシコ事情と両国の小話

2014年05月

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アメリカ小話「スピード違反」
 
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                              www.photosearch.com
 ハイウエイ・パトロール隊員はスピード違反車両を停車させて、運転免許証の提示を求めると、女性は「ごめんなさい、持っていません。飲酒運転で取り上げられました」と言った。
 
 「では車検証を出してください」と警官、
 
すると、女性:「お見せできませんわ。実は私はこの車の持ち主を殺して車を盗みました。
彼の死体はトランクに入っているわ」とよどみなく答えた。
 
 ショックを受けた警官は直ちに本部に報告して、応援を要請した。
数分後、6台のパトカーがサイレンを鳴らして現場に到着した。
 
 ハイウエイ・パトロール隊長は拳銃を構えながら、慎重に女性の車に近づくと、
「奥さん、トランクを開けなさい」と女性に命じた。
 
 女性がトランクを開けると、中は空だった。
 
隊長:「これはあなたの車ですか?」
女性:「そうです。ここに車検証があります」
 
隊長は当惑しながら、「私の部下はあなたは免許証も持っていないと報告したが…」と言った。
 
「もちろん、持っているわ」と言いながら、女性は免許証を見せた。
 
「どうなっているんだ、まったく…」と隊長は理解に苦しむと言った表情でヘルメットの上から頭をたたきながら、「私の部下はあなたは無免許のうえ、男を殺して彼の車を盗み、死体はトランクの中に入れた、と私に報告したんですぞ」と言った。
 
 「信じられない作り話だわ」と女性は言った。
 
そして彼女は「隊長さん、あなたの嘘つき部下は、その上あたしがスピード違反もしたと
言ったのではないでしょうね?」
と女性はまくし立てた。
 
 お後がよろしいようで……
 

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        W杯開催中、君の細君が守るべき14の規則」
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南米コロンビアの女性サポーターたち(www.taringa.net
 2014 FIFAワールド・カップ・ブラジル開催が間近に迫っている。最近、各国のW杯事情を調べていると、面白い記事を見つけた。「W杯開催中、君の細君が守るべき14の規則」と言う記事である。調べて見ると、このマッチョマン的規則を作ったのは、コロンビアのペドロ・アルマンド・メディナと言う男だと分かった。
 
 
  14の規則のお蔭で有名になった、彼が主宰するBLOG [El Catire del Cafetal]にはスペイン語圏各国から種々の書き込みが寄せられているが、女性は皆、「怒り心頭に発して」かんかんになって怒っている。
しかし、ちょっと待ってもらいたい。アルゼンチンのtaringaというソーシャル・メディアに載った「14の規則」に関する、同国人の面白い書き込みがあった。要するにFIFA W杯は男にとって、人生そのものであり、誕生と並ぶ人生の重要な「儀礼」である、と言う。
従ってW杯をオリンピック、野球のメジャーリーグのワールド・シリーズ、スーパー・ボウル等の「どうでもいい催物」と混同しないでもらいたいと言う。
こう言う思想から生まれたのが、「君の細君が守るべき14の規則」、即ちすべての女性はW杯の奥の深さを理解し、W杯テレビ観戦中の亭主、恋人たちの邪魔をしないように、14の規則を順守すべし、と南米の男たちは主張する。
 
ある女性が、4年前のW杯でこの規則を作った男性と同じ思想の前夫と離婚した、と書き込んでいるところを見ると、南米にはこんな亭主関白がまだ生き残っているのだ。
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ブラジルの女性サポーター(plun.org)
 男性たちはこの規則を面白がっているのが大多数だが、中には「バカバカしい」と言って怒るのもいる。私の趣味は小話だが、この規則は小話としても秀逸である。これを読んで女性は怒るが、男性は呵呵大笑する。こういうW杯の楽しみ方をするのが南米流なのだ。
 
ところで、私がこの「14の規則」を取り上げたもう一つの理由は、W杯ブラジルでコロンビアは日本と同組のグループCに入っているからである。そして、コロンビア人は自国が負けてくると、不機嫌になって、細君に八つ当たりするのである。ちゃんとこの規則7条にそう書いてある。
ぜひともコロンビアを破って、コロンビア男性を不機嫌にさせようではないか?
 
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アルゼンチンの女性サポーター(www.taringa.net
では、南米中の女性たちを怒らせた、「W杯開催中、君の細君が守るべき14の規則」全文を紹介しよう。お嬢さん、奥さん、お母さん、あなたは14の規則を守れる?
 
W杯開催中、「君の細君が守るべき14の規則」
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テレビに向かって怒鳴るコロンビアのファン(elcatiredecafetal.wordpress.com
君の細君と全女性へ通告する。(全女性、即ち独身、既婚者、愛人、女友だち、母親、その他を問わず)
来月の12日から713日のWBtasil2014開催期間中下記の14の規則を順守するよう要求する。
 
1.    スーパーでの買い物はW杯試合中継以外の時間帯で行うこと。再放送番組中も例外ではない。
2.  会話のテーマを共有するため、スポーツ新聞を読むこと。さもなければ、W杯期間中、家庭内コムニュケーションはない、と覚悟せよ。
3.  この1ヶ月間、テレビは俺のものとする。例外なしに全時間帯、俺が番組を選ぶ。リモコンは俺専用とする。
4.  もしテレビの前を通る必要があるときは通っても良い。ただし、音を立てず俺の観戦の邪魔にならないように、這って通ること。
5.  試合中継中、俺はおしでつんぼになる。お前の相手はしないし、玄関ドアを開けたり、電話に出ることもしない。子どもが階段から落ちても駆けつけないし、姑にも挨拶しないし、買い物にも行かないし、キッチンが火事になっても消火しない、その他の家事も同様だ。
6.  冷蔵庫をビールで一杯にすること。W杯中継を見に来る俺の友人たちに笑顔であいさつすること。そのお返しとして、夜の12時から朝4時までの間、お前にもテレビ視聴を許す。ただし、重要試合の再放送がないときに限る。
7.  俺のチーム(俺の場合、コロンビア)が負けていて、俺が不機嫌な顔をしているとき、「大げさね~」とか「絶対勝つわよ」などと話しかけないこと。俺をさらに怒らせるだけだ。
8.  お前は俺と並んで座って試合を観てよろしい。ただし話しかけることは、ハーフタイムのコマーシャルのときに限る。(ただしテレビ画面に選手が映っていないときだけ)なお、サッカーに関する技術的コメントは差し控えてもらいたい。
9.  ゴールの再放送は非常に、非常に重要である。すでに見た場合でも、何度も見てそらで覚えていても関係ない。それでも新たに、何度も何度も見たいのだ。分かったか?
10.お前の友人たちがこの期間中、結婚、子どもの洗礼、食事会等を計画
したり、病気になったり、突然家を訪ねて来ないことを望む。特に、準決勝以降はだめだ。もしこれらの催事が決勝戦の日にぶつかった場合、友人に三種の選択肢を与える。A)NO B)行かない C)邪魔せんでくれ
11.しかし友人がW杯のテレビ観戦に我々を自宅かバーに招待してくれる場合は喜んで受ける。直前になっての招待でも問題ない。あゝそうだ、もしお前がすぐに外出準備出来ない場合は仕方がない。独りで行くぞ。
12.一日の終わりに放映される、ゲームのハイライトはゲーム同様の重要性を持つ。「この場面もう見たじゃないの、チャンネル変えなさいよ」などと絶対言わないこと!No, No…… NOOOOOOOOOO!!!
13.開会式、閉会式の日は、オードブルを準備し、ビールを冷やし、サンドイッチやハンバーガーを作り、ビールの栓を抜いて、アミーゴスのおもてなしをするために、終日家で待機すること。そしてすべてを静粛におこなうこと。
14.最後に言っておきたい。「W杯は4年に一回だけなのが救い」とか、「幸いなことに一か月で終わるから」などと言う表現は慎んでくれ。俺はこの種の無知で悪趣味な表現には免疫になっているが、もしお前が知らなければ、教えてやろう。
サッカーの重要な祭典はこの他に、欧州のUEFAチャンピオンズ・リーグ、南米のリベルタドール杯、南アメリカン・カップ、英国リーグ、スペイン・リーグ、イタリア・リーグがある。そして、次のW杯の予選だってすぐ始まる、って言うこともな……
 
女性たちよ、上記14の規則を精読して暗記せよ。コピーを二枚作り、一枚は冷蔵庫の扉に、もう一枚はベッド脇の壁に張ること。
FIFAワールド・カップ杯を嘗めてはいかん!!! 分かったか!
(終わり)
出典:Las 14 reglas que debe cumplir tu mujer durante el Mundial [El Catire del Cafetal]

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              「連邦猟区管理官」
       
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                      合衆国連邦猟区管理官(everydaylife.globalpost.com/
その男は北キャロライナへ鹿狩に行った。一頭の鹿を仕留めた男は、獲物をずるずると彼のピックアップの方へ引きずって行く途中、連邦猟区管理官に呼び止められ、狩猟許可書の提示を求められた。
 
 その男が許可書を見せて車に向おうとすると、管理官は大声で怒鳴った。
「おい、そんなに急ぐな、俺は鹿を検査する必要がある」
 
 管理官は鹿の尻に指を挿入して引き抜くと、指の臭いを嗅いだ。
「おい、これは北キャロライナじゃなくてバージニアの鹿だ。
この鹿を狩猟するには、バージニアの狩猟許可書が必要だが、持ってるか?」と訊いた。
 
 たまたま前週バージニアへ狩猟に行っていたその男は、バージニアの許可書を連邦猟区管理官に提示したので、管理官はその男の狩猟を認める他なかった。
 
 次の週、その男は再び鹿狩に来た。この日も一頭の鹿を仕留めたその男は、獲物をずるずると彼のピックアップの方へ引きずっていく途中、素早く彼を発見した、先週と同じ猟区管理官に大声で呼び止められた。
「ちょっと待った!俺は鹿を検査する必要がある」
 
 管理官は鹿の尻に指を挿入して引き抜くと、指の臭いを嗅いだ。
そして、勝ち誇ったようにその男を見ると、
「こいつは南キャロライナの鹿だ。この鹿を狩猟するには、南キャロライナの狩猟許可書が必要だが、持っているか?」と訊いた。
 
 その男は「もちろん!」と言うや、ピックアップから南キャロライナの許可書を取ってくると管理官に提示したので、管理官はまたしてもその男の狩猟を認める他なかった。
 
 その男と管理官の戦いはその後三週間続いた。その男が射止めた鹿は、一週目がジョージアの、次の週がテネシーの、そして三週目が西バージニアの産だった。
毎週、連邦猟区管理官は指テストを実施したが、その都度その男はすべての州の狩猟許可書を提示して、管理官を切歯扼腕させて来た。
 
しかし西バージニアの鹿を検査したとき、連邦猟区管理官は我慢の限界点に達していた。
適法な狩猟許可書が提示されると、ついに堪忍袋の緒が切れて彼は激怒した。
 
「おい!お前は南部の糞ったれ州全部の許可書を持っていやがる……
一体全体、お前はどこの州の生まれだ?」と語気を荒めて詰問した。
 
 その男はにやりと笑うや、ズボンを下ろし、尻を突き出して言った。
「当てて見な!」
 
 お後がよろしいようで……
 

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   「W杯ブラジル20141950
 
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 1950年当時のマラカナン・スタディアム(リオ・デ・ジャネイロ)収容人数は17万。(inciclopadia.wikia.com
 W杯(サッカー・ワールドカップ)ブラジル2014の開催まで一か月を切った。先日、W杯の歴史を読んでいると、興味深い記録に気が付いたので、表にして見た。
ご覧のようにW杯は第一回のウルグアイ1930以降、アメリカ大陸で7回開催されている。そして、その7回とも南米諸国がチャンピオンになっているのだ。
     
南北アメリカ大陸で開催されたW杯        

 
年度
開催国
チャンピオン
1
1930
ウルグアイ
ウルグアイ
2
1950
ブラジル
ウルグアイ
3
1962
チリー
ブラジル
4
1970
メキシコ
ブラジル
5
1978
アルゼンチン
アルゼンチン
6
1986
メキシコ
ブラジル
7
1994
合衆国
ブラジル
8
2014
ブラジル

 
注目すべきは、ブラジルが7回のうち4回チャンピオンに輝いている。ところが、1950年、自国で開催、しかもリオ・デ・ジャネイロの完成したばかりの世界最大のマラカナン・スタディアムで戦われた、対ウルグアイの事実上の決勝戦で、ブラジルはまさかの敗北を喫したのである。
これをサッカー・ファンは「マラカナッソ」と呼ぶ。
 サッカー界の伝説となったこの試合以後、マラカナッソはブラジル人にとって、「予期せざる敗北または災害を意味する」ようになった。
 
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2013年改装なったマラカナン、収容人数は8万人と半分になった(Photo:EFE
私は上の表が示すように、アメリカ大陸で開催される、W杯は間違いなく南米チームが優勝するという、伝統を信じている。そして、今度こそ、愛するブラジルが自国で優勝して、カー二バルをにぎにぎしく、繰り広げてくれるだろう。
ではブラジルにとって二回目となる、W杯開催を前に、苦く辛い思い出である、Brasil1950を振り返って見たい。過ちを繰り返さないように……
 
 W杯ブラジル1950、ウルグアイ対ブラジル
 第二次大戦終了後初となったW杯・ブラジル1950は世界33か国が参加して、16チームがブラジル1950に歩をすすめ、4グループに分かれて予選が戦われた。その結果、決勝ラウンドには、ブラジル、ウルグワイ、スペイン、スエーデンが残った。4チームは総当たり戦を展
開し、ブラジルはスエーデンを7-1、スペインを6-1で下して圧倒的な強さを示した。一方、ウルグアイはスエーデンに3-2で辛勝、スペインとは2-2で引き分けて勝ち点3を獲得した。
そして、勝ち点4のブラジルは、引き分けで優勝できるアドバンテージを持って、事実上の決勝戦となる、ウルグアイ戦に臨んだのである。
 
 当時ウルグアイ・チームはW杯とオリンピックの各一回のチャンピオンであり、アメリカ杯を8回も勝ち取った、世界最強のフットボール・チームの一つだった。世界中から敬意を払われていた、ウルグアイはブラジルにとって決してた易い相手ではなかった。
 
 しかし、ブラジル1950の最終ラウンドで見せた、ブラジルの強さがブラジルのマスコミ、ファンを自信過剰にさせ、ウルグアイをあなどり始めた。
対ウルグアイ戦に先駆けて、Diario de Rio(リオ新聞)は、「ブラジルが勝つ、W杯は我々のもの」と書き、O Mundo(世界)紙は、早々と「ブラジル、W1950のチャンピオン」と一面見出しに書く始末だった。
 
 リオの街では、カーニバルの山車の準備が完了し、「ブラジル・1950チャンピオン」と書かれた、50万着のT-シャツが準備された。マラカナン・スタディアムには、「世界王者ブラジルを称えます」という横断幕が掲げられた。
政府もブラジル選手の名前を刻んだ、記念硬貨の鋳造を準備していた。また、スタディアムに召集された楽団のメンバーには、ブラジル国歌の楽譜は渡されたが、ウルグアイ国歌は不必要として、楽譜は準備されてもいなかった。
 
 ブラジル人の自信過剰は何と、ウルグアイ人にも波及して、同国の駐ブラジル大使館員たちは、試合前にウルグアイ監督に、「名誉ある負け方」をするよう要請したほどだった。要するに、スエーデン、スペインのように大量のゴールは避けるように、ということだった。
さらには、FIFA会長のフランス人、ジュール・リメ氏さえ、地元のファンのブラジル大本命の勢いに影響されていた。リメは背広の右ポケットに、王者ブラジルを称える、ポルトガル語のスピーチを用意していた。
 
 技術面から見て、ブラジルとウルグアイの実力は伯仲していたにも関わらず、マスコミとファンは、ホーム・チームの勝利は決まったも同然と信じ、ウルグアイが勝利することなど、起こりえないという確信が、国中に満ちあふれていた。
 
 試合が始まった
 試合開始前、ウルグアイの監督、選手たちもブラジル本命説を意識していた。スエーデン、スペインのような屈辱的な敗北を避けたい、フアン・ロペス監督は試合直前の選手たちとのミーティングで、「守備本位で行け」と注文を付けた。
監督が部屋を出ると、オブデュリオ・バレーラ主将は、選手たちにこう言った。
「ロペス氏は立派な監督だが、今回のみは間違っている。守備本位でプレイすれば、スエーデン、スペインと同じ目にあう」
そして、ウルグアイの選手たちはキャプテンの意見に同意したのだった。
 
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試合開始前のペナント交換、右黒パンツがバレーラ主将(charlatecnica.cl
 午後3時、イギリス人主審、ジョージ・リーダーの笛が鳴って、試合は開始された。前半は双方にゴールはなく、0-0だった。前の二試合と同じく、大量得点を期待した、175千の観客は不満そうだったが、引き分けでもブラジルはチャンピオンになれるのだった。
後半2分、ブラジルのフリアカがこの日初のゴールを決めた。大観衆はゴールを祝って、大騒ぎとなり、爆竹が鳴り渡った。しかし、騒ぎは長続きしなかった。ウルグアイのバレーラ主将が、今のはオフサイドではないか、と審判に抗議したからだ。
 バレーラは後年、この件についてこう語っている。
「ゴールに大興奮したブラジル人観衆の応援によって、ブラジル・チームの意気が上がり、前二試合のような大量得点の再現を恐れたのである」。
ウルグアイを圧倒するブラジルの勢いが、ウルグアイにとって、試合の不利な雰囲気をさらに増大させることを察知した主将バレーラは、「いわゆる」オフサイドをイギリス人主審と争うことによって、試合の流れを変えようと試みたのである。バレーラは英語が出来ず、イギリス人はスペイン語が出来なかったので、二人の会話は成り立たず、ウルグアイ選手たちも主将の意図を理解出来なかった。
 しかしながら、バレーラはこの抗議によって、「ゲームを冷却させる」ことが出来る、と読んでいた。試合の中断によって、観衆の興奮は収まり、試合が再開された。
そして、21分、ウルグアイのスキアフィーノが同点ゴールを入れた。このまま引き分けになっても、ブラジルは勝利できるのだが、観衆はあくまで勝利を望み、選手たちも同様だった。
メディアも観衆もブラジルが「引き分けて世界チャンピオンになる」ことを望まなかった。
 
 後半34分、ウルグアイのギジアが二点目のゴールを決めた。その瞬間、あれほど騒がしかった、マラカナンは深山幽谷のように、まったくの静寂に包まれた。
残る11分、ブラジル11は死力を尽くしたが、同点ゴールは生まれなかった。
 
    予期しなかった敗北の「その後」
 試合終了後、大部分の観衆は無言で静かに、或いは泣きながらマラカナンを後にした。ブラジルの選手たちは肩を落としてフィールドから去って行った。ラヂオのアナウンサーはまったく予期しなかった敗北について、つらく悲しい思いを述べ続けた。
 そして待機していた楽団は、ウルグアイ・チームに対する、ジュール・リメ杯の授与式は行われなかったため、ウルグアイ国歌の演奏はなく、楽団の出番はなかった。
また多くの狂信的ブラジル・ファンが悲嘆のあまり自殺した、と報じられた。
 
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ウルグアイのバレーラにトロフィーを渡すレミ・FIFA会長(pasandolaraya.com 
 FIFA会長ジュール・レミは大混乱のなか、ウルグアイのバレーロ主将をやっと見つけだし、隠れるようにして、自分の名が付いた優勝杯を渡すと、優勝の祝いの言葉も掛けられずに握手だけ交わして、分かれたと言う。
 
 この日はブラジル・チームが上下白色のユニフォームを着た最後の試合となった。この日以降、ブラジルは今度こそ幸運をもたらしてくれると信じて、その後伝統となる緑と黄色のシャツに青いパンツのユニフォームを着用することにした。
 
 数十年後、ブラジルを訪ねた決勝ゴールを決めたギジアが語った言葉に、マラカナッソがブラジルと世界のフットボールに与えた衝撃の大きさが表れている。ギジアはこう語った。
「世界中でマラカナンの大観衆を静粛にすることが出来たのは、我々三人だけだった。ヨハネ・パウロ二世 ローマ教皇とフランク・シナトラと俺だ」
 
更にその数年後、ブラジルを訪れた、あの日ウルグアイの主将を務めていた、オブデュリオ・バレーロはもっと率直だった。そしてこう語った。
「本当のことを言うと、もしあの試合をあと99回プレイしたとしても、我々は全試合負けただろう。だが、あの日の試合は幸運にも100番目だったのだ」
 
ブラジル代表は雌伏8年の後、「スエーデン1958」で彼らの最初のW杯を獲得した。
W杯初出場を果たしたペレは、6ゴールを挙げて優勝に貢献した。決勝戦の相手はスエーデンだった。
(終り)
 
 

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メキシコ小話「同病相哀れむ」
 
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 (unjubilado.com)
 自宅で愛人とベッドを共にしていた妻は、出張中の夫が帰ってきたことに気付き、
「あんた、急いで! 部屋のすみに立っててちょうだい」と愛人に注文した。
 
妻は素早く彼の全身に油を塗りたくり、その上にベビーパウダーを振り掛けながら、
更なる指示を与えた。
 
「私が声をかけるまで動いちゃだめよ。銅像になったと思ってね。私は友人のフェルナンデス家の寝室でこういう銅像を見たのよ」
 
 言い終わるや否や、夫が寝室に入って来て質問した。
「なんだ、これは?」
 
 妻は平静を装って、返答した。
「あっ、これ? 銅像よ。フェルナンデスの寝室にこういうのがあるのよ。私、すっかり気に入って、同じのを買っちゃったのよ、好いでしょう?」
 
 その後、いい塩梅に夫は銅像を話題にすることなく、夜は更けて行った。
 
丑三つ時の午前2時、妻はぐっすり眠っていた。
ベッドでTVを見ていた夫は、やおら起き上がるとキッチンへ向かった。
 
 夫はサンドイッチを作ると、ビールを冷蔵庫から取り出して、寝室に戻ってきた。
そこで、夫は銅像に向かってドスの利いた声で言った。
 
「おい、 このろくでなしの大馬鹿野郎!これを食べてビールでも飲め!
俺はフェルナンデスの寝室で二日間、バカみたいに立っていたが、あん畜生は水一杯くれなかった…」
 
 お後がよろしいようで……
 

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