アメリカ便り

アメリカ便り Letters from the Americas 様々なアメリカ&メキシコ事情と両国の小話

2020年02月

アメ便り 左上 小
アメリカ便り青グラデーション

                アメリカよもやま話・学校編
          
           「祖父母の日に招かれて」

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 2月中旬アメリカから帰国した。到着前の機内放送でも空港でもコロナウイルスに関する注意等はまったく聞くことも見ることもなかったのは、実に意外だった。到着した日曜日の羽田は小雨だったが意外と寒くなかった。暖かい南テキサスから帰って、東京は寒いでしょう、とよく言われるが、ぼくが暮らすサン・アントニオ市(以下SA)の気温は明け方には氷点下になることもあるが、10時には20℃前後に上昇する。今年のSAは例年に比べて少々寒いが、日中は暖かくなるので、マイアミほどではないが、冬のSAは気温が観光の目玉となる。「毎日ゴルフができます」と言う風にPRするのである。

 そんな南テキサスでもまだ寒い1月31日(金)、末っ子の孫Kenzoが通う、聖マタイ小学校で毎年開催される、「祖父母の日-Grandparents Day」に招待された。この学校はカソリック系の幼稚園から中学までの一貫校で、4人の孫のうち大きい3人もここを卒業している。二面のバスケット・ボール兼バレーボールのコートと両端に観客席がある、新築の体育館が会場に当てられた。

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朝食を食べて、会場に8時半に着くと、会場の2/3に並べられた椅子席はすでにおじいちゃん、おばあちゃんと親御さんたちで満席だったので、息子夫婦とぼくは立ち見席で子供たちの歌と踊りを楽しんだ。多分、1000人は入っていただろう。今年はスターバックスのコーヒーと菓子パンの無料サービスまであった。女性の校長先生の歓迎の辞の後、例年なら「今日の祖父母のお祝いのために、わざわざ遠いところからいらした、グランパ、グランマはいらっしゃいますか?」と問いかけるのだが、今年はなかった。
昨年ぼくは手を挙げて、「Tokyo, Japanから来ました」と叫んだ。大部分の祖父母たちは、遠くてもカナダ、メキシコくらいだったが、「Kabul、Afghanistan」と名乗ったおじいちゃんがいた。ぼくは「負けたな」と思ったが、先生たちは「Tokyoのおじいちゃんが勝ちました」と言って、学校のロゴ入りの真っ赤なひざ掛けの賞品を校長先生がわざわざぼくの席まで届けにきてくれた。その代わり、今年は幼稚園から中学3年生までの10学年のパフォーマンスの合間に抽選で景品が当たる、くじ引き会が開催されて大賑わいだった。驚いたことは、中には最高5人のお孫さんがこの学校に通学している、祖父母がいたことだ。だから、3,4人の孫たちの歌と踊りを鑑賞するのに、3時間ほどかかる。従って席が空くことはまれで、我々はず~っと立ちっぱなしだった。

 ぼくはアメリカ人の家族の絆は日本人より弱い、と思っていた。何しろ、アメリカの夫婦の50%以上は二度目以上の結婚による夫婦だからである。ところが、夫婦関係は壊れても、子供、孫との絆は続くのである。昔、孫のRickの高校サッカー応援で毎週、各地に試合を見に行ったとき、両親が離婚した、孫のチーム・メイトの応援に元夫婦は別々に応援しに来ていた。お母さんはお母さん仲間で大いに盛り上がっていたが、お父さんは一人さみしく座っていたのを覚えている。こんな時、女性は強いですね。
 女性が強いといえば、孫の学校である聖マタイ小学校の校長先生と副校長先生は共に女性である。大体、アメリカの小中学校の先生は女性が多い。このお二人は共に教育学の修士の資格を持っている。校長になるには、少なくとも修士の資格は必要で、小、中学校の先生で博士号を持っている人も珍しくない。
日本では、モンスター・ペアレントと言う、何かにつけて先生に文句をつける親たちがいるそうだが、こういうモンスターと理論闘争するには、修士級の教養が必要というものだ。ところで、このモンスター・ペアレントは和製英語でアメリカでは通用しないが、上手い表現であることは確かだ。

        いじめは卑怯な振る舞い
3.elpasodiocesefoundation.org

           写真:(www.elpasodiocesefoundation.org)
 モンスター・ペアレントには驚いたが、日本は子供たちの中にもモンスターが多いようだ。同級生をいじめる子供たちである。アメリカにもいじめはある。だが、アメリカの学校のいじめへの対応は、日本と大きく違っている。
数年前日本でいじめによって、小学生が自殺するという痛ましい事件が起こったとき、筆者はKenzoの学校の先輩でもある、彼の三人の兄姉たちと話し合ったことがあった。

 孫たちに君たちの周りでいじめにあった仲間がいたかどうか、を聞いたのである。すると、男の子たちは「聞いたことがない」と言ったが、孫娘は「他校の女子生徒が自殺未遂事件」を起こしたのを聞いていた。
孫娘が語ってくれた事件の概要はこうである。
或る女子中学生に数人のクラス仲間が、「あなたのお父さん、お母さんはあなたを愛していない」と冗談半分に何度も繰り返し言った。やがて、女の子は「中傷を信じて、自殺を図った。」幸い発見が早く、少女の生命に別状はなかったのは、不幸中の幸いだった。

 そこで、君たちはこの事件についてどう思うか?と聞いてみた。
すると、三人はそろって「弱い子をいじめるのは、卑怯な振る舞いだ」と返答した。
三人が通うカトリック系私立校では、あらゆる機会に、「いじめ問題」が取り上げられ、「弱いものをいじめるのは卑怯なふるまいである」という教えが繰り返し、伝えられる。
「君たちが遊び半分で言う、心無いことばがどれだけ学友を苦しめるか」を君たちは知る必要がある、と生徒たちは教室で指導される。

とにかく、いじめの具体的な例とその痛ましい結果を紙芝居、ヴィデオ、映画、歌等で紹介して、「学友を不幸な思いにさせるのは、卑怯な行いです」と言うメッセージが繰り返し、繰り返し発信される。孫たちの学校では幸いにも「いじめ」の例はないにも係わらず。

 アメリカの先生は、「見て見ない振りをする多数の傍観者」をふくめて、いじめの加害者の方が被害者より多数である、との認識を持っている。従って、いじめを予防することに重点を置いて、いじめ加害者予備軍を無くそうと言う確固たる方針で、子供たちを教育している。そして、加害者たちは無智な迷える羊であり、親、教育者の無智、無責任の犠牲者であると考える。学校側は被害者への対応はもちろんだが、「いじめ加害者予備軍」への真剣な対応が最重要である、との認識を持っている。
恐らく日本の先生たちには、「大勢で一人の弱い子をいじめるのは、卑怯な振る舞いでフェアでない」という発想がない、と思う。
あるとき筆者は聖マタイ小学校の先生が生徒にいじめの話をして、「イエスキリスト様はこんな時、どうなさると君たちは思う?」と問いかけたことを聞いたことがある。これは効果てきめんだった。これ以上、子供たちを「不幸な目に合わせないために」、発想の転換と日常的に「いじめは卑怯な振る舞いであること」を繰り返し発信することを日本の先生たちにお願いしたいものである。(終わり)

 

メキシコ小話A - 年忘れ用左上
メキシコ小話OK


                べナンシオの拾った手鏡

             

1.elperiodicodearagon - コピー

                   写真:(www.elperiodicodearagon.com)
【蛇足的まえがき】
  スペイン語圏諸国で人気のある小話のジャンルにガイエーゴ小話(Chistes de Gallegos)がある。ガイエーゴとは、スペインのガリシア地方で生まれ育った住人を指す言葉で、無知蒙昧な人々として知られ、とん馬な事ばかり仕出かすのである。何よりの証拠は、スペイン王立アカデミー編纂のスペイン語辞書に「ガイエーゴはガリシア地方に住む人々で、とん馬の同義語である」と記されていたことである。

 「いた」と言うのは、2002年度版から「とん馬の同義語である」は、数百年ぶりにガリシア住民の抗議を受けて、削除された。ことの起こりは数世紀前、中米のコスタリカのスペイン語専門家が、アカデミー辞書編纂者に「ガイエーゴはとん馬の同義語である」との説明を挿入するよう要請した結果と言われている。とにかく「ガイエーゴとん馬説」はスペイン政府のお墨付きだったのだから、将に小話的である。
 さて、メキシコをはじめとする中南米諸国では、ガイエーゴのように、寝食を忘れてひたすら働き、ひと財産を築いても、美味いものも食わず、借家に住み、女遊びも酒もばくちもしない連中を「人生をEnjoyする術を知らずに墓場の大金持ちになる奴ら」と言って、バカにする風潮がある。これ即ち「ガイエーゴとん馬説」なのである。さて、ガイエーゴ小話の主人公は、ベナンシオとマノロと決まっている。では、ベナンシオが今回は何を仕出かしたか、ご覧あれ!なお、掲載した写真の女性はトランプ大統領の「そっくりさん」として有名になったガイエーガ(ガリシア女性)です。


              「ベナンシオの拾った手鏡」


 べナンシオが道端に落ちていた手鏡を拾った。
鏡に映った自分を見て、「誰だこいつは?この顔は見たことがあるな。」とつぶやいた。


そして、ズボンのポケットに手鏡を突っ込んだ。


自宅への途中、彼はもう一度鏡を取り出して、つぶやいた。
「誰だっけ、こん畜生は?どこかで会ったことがあるんだが…。」と。


自宅に着くと、手鏡をズボンのポケットに仕舞って、夕食のテーブルに座った。


女房のホセハが料理を取りにキッチンンに行くと、べナンシオは再び手鏡を覗きこんだ。
「畜生め!俺はこいつを見たことがあるんだ。待てよ、床屋のマノロじゃないか?」と独り言ちるのを聞いて、好奇心をそそられたホセハが口をはさんだ。


「べナンシオ!手にもっているのは何なの?」と訊いた。


「大したもんじゃねえよ、ホセハ」と言って、亭主は鏡をズボンのポケットに入れた。
夕食を食べ終わると、さっさっとベナンシオは二階の寝室へ上がって行き、脱いだズボンをソファに放り投げた。


ホセハは先ほどから、亭主が大事にしているものが何か、と気もそぞろになり、亭主が熟睡したのを見極めると、ソファに近づきズボンのポケットから手鏡を取り出した。

そして、鏡に映った自分を見ると、
「思った通りだわ。こんなデブ女のどこが良いんだか? とん馬だけあって、好みも悪いわ。
それにこの女、アメリカの大統領にそっくりだね…。」と言った。


お後がよろしいようで…。

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        90年の歴史に学んだラスベガス

 

1.1932年フレモント通り

    写真:(www.timetoast.com)                      

 

  カジノの意味は?

先日ふとカジノは何語なのか、そして何を意味するのか、と疑問を持った。調べると、イタリア語のcasinoが語源だと分かった。これは17世紀から使い始められた言葉で、casa(家)の縮小語、即ち小さな家または建物を意味する言葉だった。Dictionary.comによるとcasinoとは「会合、娯楽、ダンスその他に使用する、ビルディングまたは大きな部屋を意味し、とりわけこのような場所には、ギャンブルを行う器具やテーブル等が備わっている」とのことだった。即ちカジノはギャンブル等を行うビル、または部屋を指す言葉なのである。

 

ところで、永年メキシコで暮らしていた筆者にとって、Casinoは「カーノ」の発音が耳慣れていたので、日本式の「カジノ」には違和感があった。本家のイタリアはカジと語尾にアクセントをつけて発音するが、他のヨーロッパ諸国は「カーノ」が主流らしい。ただし、英語とスペイン語圏は「カーノ」と発音して「シ」が濁らない。

 

カジノが「建物」を意味するとなると、そこで遊ぶ(?)スロット、バカラ、ルーレット等の賭博行為をIR事業の本場ラスベガスがあるネヴァダ州はどう表現しているかと言うと、ギャンブル(gambling)ではなくgamingが公用語になっているように、カジノ関係者はギャンブルという言葉の感じを好まず、ゲーミングを好んで使うようだ。従って、この二つの言葉は同じ意味と思っていいが、後者の方の耳当たりがいい、ということなのだろう。

 

2.dissolve.com

     写真:(www.dissolve.com          

では、日本政府はどうかと言うと、いわゆるIR事業法、正確には「特定複合観光施設区域整備法」では、ネヴァダ州と同様にギャンブルという用語は使用せずに「カジノ行為」という用語を創作している。そして、「カジノ行為とはカジノ事業者と顧客との間又は顧客相互間で、同一の施設において、その場所に設置された機器又は用具を用いて、偶然の事情により金銭の得喪を争う行為」である、と規定している。だが、カジノ行為とは非常に不正確な表現である。先に記したが、「カジノとは会合、娯楽、ダンスその他に利用する、ビルディングを意味し、このような場所にはギャンブル器具が備わっている」ので、カジノ行為では、会合、娯楽、ダンスも入ってしまう。従ってIR法はギャンブルを意味する的確な用語を使うのが筋である。だから、カジノ行為に代わる用語を探す必要がある。例えば、パチンコ業界が用いる「遊技」という用語に賭け事の意を含める手もある。

博奕、賭博の同意語には、賭け、勝負事、手慰み、袁彦道(えんげんどう)等がある。恥ずかしながら、筆者は袁彦道という言葉を知らなかったが、これは賭けを意味する、中国起源の言葉で、八犬伝等の時代小説で使われている。「賭け」が嫌なら、こういう用語を使ったらどうだろう。

 

ネヴァダのゲーミング規制

3.frickr.com
 

                                            写真:(www.frickr.com)

ネヴァダ州政府はHPに「世界最高水準のゲーミング規制を目指す」と書いている。ゲーミングとは日本が使う「カジノ行為」のことである。米国最古の公認カジノが誕生した、1931年のラスベガスのカジノはマフィアが我が物顔でのさばり、「飲む、打つ、買う」の歓楽街だった。そのラスベガスは今や、メガリゾート時代と呼ばれる、家族向けのリゾートへの方向転換が行われ、総売上に占める、ラスベガスのゲーミングの割合は30%台にまで下がった。そしてマフィアのボスたちに取って代わって、名の知れた大企業がラスベガスのホテル、カジノ、ショウビジネスに参入する健全な産業に衣替えした。その間の事情は、アメリカ便り「マフィアを追放したラスベガス」でレポートした。将にネヴァダ政府は、荒馬を巧みに乗りこなす、名カウボーイ役を果たしたのである。

 

さて今回、ネヴァダ州のゲーミング規制を調べてみて、驚いたことがある。それは、ゲーミングを規制する「ネヴァダゲーミング管理委員会」は経済省でも警察でもない、州政府の「徴税局の上部機関である、税務委員会」の管轄下にあることだ。これこそが、ネヴァダ州とラスベガスが90年の歴史から学んだ知恵、即ち「金の動き」の管理がゲーミング統制の肝心要であることなのだ。

 

そこで、ネヴァダ州は、問題が山積していた「ゲーミング産業の安定達成のため」に、二つの目標を設定した。第一は州民のゲーミングに対する信頼を勝ちうることであり、第二は州にとって不可欠な収入源である、カジノからの税金と納付金の徴収を確実にすることである。何しろ、砂漠しかないネヴァダ州にとってゲーミングとカジノは唯一の主要産業なのである。

 

以上の目標を達成するために、ネヴァダ州はゲーミングに関する二つの機関を設置している。

一は1955に創設されたゲーミング管理委員会(CONTROL BOARD)であり、他方は1959年創設されたゲーミング役員会COMMISSION)である。

 

  ゲーミング管理委員会        

 

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    写真:(www.vegaschanges.com)

1955年度ネヴァダ州議会はゲーミング管理委員会(以後委員会)を先に述べたように州税務委員会内に創設した。委員会の目的は州ゲーミング業界内の望ましくない集団を排除し、カジノ免許交付と運営に関する条例を規定することだった。同時に委員会はゲーミング免許所有者が提出する確定申告書類に関する法令と規則も制定した。

委員会の構成メンバーは知事の任命する、3名の常勤者からなり、任期は4年である。委員会はネヴァダ州内のゲーミング産業で起こり得る、あらゆる問題を統制し、規制する任務と責任を負っている。

興味深いことは、ネヴァダ州は、ゲーミング産業の安定性を保ち、州民と他州、海外からの訪問者のゲーミングに対する信頼を勝ち取るために種々の仕掛を設けている。その一つがカジノ政策の立案、カジノ認可と業界の監督、指導機関を別の組織として運営していることである。

即ちゲーミングの監督、指導と八百長、脱税がないか等の検察官的役割を果たすのが、このゲーミング管理委員会なのである。

 

  ゲーミング役員会

 

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  写真:(www.tripsaway.com

1959年、ネヴァダ州ゲーミング管理法が州議会の承認を受けたことによって、同州ゲーミング役員会が創設された。このゲーミング管理法が現代のネヴァダのゲーミング規制の土台になっている。ゲーミング役員会(以後役員会)はゲーミングに関する、最終権限を持っている機関で、州知事が任命する、4年任期の四名の役員によって構成され、うち一人が会長を務める規約になっている。役員は月一回の役員会に出席するだけのパートタイム勤務である。

役員会の最も重要な責務は、ゲーミング認可に関する、管理委員会の勧告及び労働許可に関する訴訟について最終結論を出すことである。役員会はカジノ認可に関する、承認、制限、条件付き承認、拒否、免許取消及びゲーミング免許の停止の最終決定の権限を有する。

なお、ゲーミング免許所有者に規律問題で不適切であると信じるに足るケースが起こった場合、委員会は検察官的役割を果たし、役員会は裁判官的役割を果たす決まりになっている。この件に関する最近の事例としては、ラスべガスの発展に貢献した、大手ホテル、カジノであるウイン社のCEOウイン氏がセクハラ問題を起こして際、役員会は彼の辞職を命じている。非常に厳しいのである。

  依存症より「金の動き」を管理せよ

 

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  写真:(www.gamblingsite.net

筆者はラスベガスのゲーミング業界と監督機関を調査して、日本との違いに感づいた。それは、日本の野党、マスコミが口を酸っぱくして強調する、カジノ依存症とマネーロンダリング問題が、ラスベガスではまったく取り上げられていないことだ。彼らは同州の住人と訪問客の安全、安心、信頼を確保する、とは繰り返し述べているが、日本の人々が強調する、二大問題を政府、マスコミは気にも留めていない。考えてみれば、この二つの問題は、カジノとカジノ行為の専売特許ではないのである。カジノ依存症を危険視するのなら、パチンコ、競馬、競輪依存症、果てはアルコール、タバコ依存症はどうなんです?

マネーロンダリングももちろん大きな問題だが、これもカジノの専売特許ではなく、日本国内でもよく聞く犯罪行為なのだ。それを、あたかもカジノがこの件で主役を果たすような論陣を張って、野党とマスコミはカジノ公認を防止しろ、と主張するのである。

そこで、パチンコ業界の各種HPを覗くと、彼らも「パチンコ依存症」への風当たりが強く、その対策を講じていることが分かった。パチンコ業界は「のめり込み」と呼んでいるが、「依存症」への批判の矛先は、カジノ業界だけではないことが分かる。しかし、ラスベガスのカジノとパチンコを比較すると、興味深いことが分かってくる。

 

7.http.i2wp.com

    写真:(http://i2wp.com/pachinko-nippo.blog/)

パチンコ業界は年々参加人員と売上減少が続き、危機感を感じているのは事実である。そのうえ、カジノが解禁されたら、更なる痛手を被り、将に弱り目に祟り目と言った状態になる。最近は大型店の閉店さえある。

さて、年間1000万人が歩いて訪れることが出来る、「コンビニ化したパチンコ」の顧客が依存症になる確率は、ラスベガスよりはるかに高い。ラスベガスを訪れる客は車で来る人が58%、残りは空路(飛行機)を利用するほど遠路はるばるやってくるのだ。因みにラスベガスは年間4200万人が訪れるが、カジノの売り上げはパチンコの半分にも満たない。パチンコをコンビニとすると、いわゆるIR事業はショッピング・モールに当たる。パチンコは日本独自なもので、外国はグアムにあるだけで、ガラパゴス的存在と言えるが、カジノは世界中に進出している。ところで、パチンコ業界の就業人口は224,00020193月)と意外に少ない。一方、米国のIR事業のホテル・カジノは、例えば、5000室を有するラスベガスのMGM グランデ ホテルがOpenした、1993年、従業員数はホテルとカジノを合わせて25,000人だった。因みに全米のIR業界の就業人口は362,00020149月)で、売上の多いパチンコ業界より50%も多い。

 

  パチンコ業界の問題点

 

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     写真:(www.aviationinternationalnews.com)

長くなったので、最後に税金問題を取り上げて終わりにしたい。わが国の数ある業界中、不正所得漏れ金額(1件当たり)の最も多いのはパチンコ業界であり1件当たり5200万円に上っている。しかも脱税摘発件数もキャバレー、バー業界に次いで2位なのがパチンコである。

ラスベガスのゲーミング業界は、詳細な収入、収益金、ゲーミングの利益率を公表している。ラスベガスがある、2016年のネヴァダ州クラーク郡のゲーミング収入の内訳をみると、スロットが63.4%、テーブル・ゲーム(バカラ、ブラック・ジャック、クラップス等)が32.6%、スポーツ賭け2.1%、ポーカー0.5%となっている。スロット即ちパチンコそのものが売上のトップなのである。その利益率(カジノは勝率と言う)は57%と低いが、これがカジノの稼ぎ頭なのだ。パチンコは将にスロットであるから、その利益率を算出してみた。貸玉料金20.7兆円と総粗利規模の3.38兆円は公表しているので、これをもとに計算すると、利益率は16.32%になる。これはラスベガスに比べて3倍の高率になる。儲け過ぎである。

 

全国1万店以上の店舗を持ち、年間20兆円の売上を誇るパチンコ業界は、透明性をモットーとする、カジノと比較されることは避けたいだろう。前述したように、ネヴァダ州のカジノの監督官庁は徴税部門である。1950年代までラスべガスはマフィアに牛耳られ、今のパチンコ業界のように、脱税のし放題だった。この歴史に学んだネヴァダ州政府は、カジノの監督を徴税部門にゆだねたのである。

日本のIR事業の監督官庁もぜひ財務省にまかせて欲しいものだ。この措置は一石二鳥の効果を呼ぶ名案である。そうなると、パチンコも警察庁の手を離れて、財務省の管轄下に入りやすくなるだろう。先ず無理だろうが、これがパチンコ業界のIR事業に反対する最大の理由だと筆者は思っている。(終わり)

 

(ご案内)

下記のUrashimaメモとアメリカ便りで、カジノ合法化問題とラスベガスの歴史をレポートしました。

ご用とお急ぎでないお方は、下記のブログもお訪ねください。よろしく!

「カジノ合法化に反対する勢力」

http://iron3919.livedoor.blog/archives/5534992.html

 

「マフィアを追放したラスベガス」

http://iron3919.livedoor.blog/archives/5615421.html



 

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アメリカ小話

               俺の犬を返してくれ!
wallhere.com

                 写真:(www.wallhere.com)
【蛇足的まえがき】
 アメリカ諸国、特に米国では金髪女性(ブロンドと言う)をバカにする小話、いわゆるブロンド・ジョークが昔から盛んである。ブロンドで青い目の女性は、男性にとって最も魅力的な存在であるだけに、どうして彼女たちをバカ扱いするのかが不思議だった。全米ネットのTVニュースのキャスターは金髪、碧眼の才色兼備ばかりなのに、である。
最近、米国行われた「全国縦断調査」の団塊世代の部を見ると、「金髪女性のIQは茶色、赤毛、黒髪の女性より少々高い」という結果が出ている。従って、金髪女性のステレオタイプな印象は間違っている。
なぜ、こんなことになったのか、ということは諸説あるが、ヒルトン・ホテルの跡取り娘のパリス・ヒルトンがこのステレオタイプな女性で、馬鹿げたことばかり仕出かしたので、金髪女性の悪いイメージが広がったという説はよく聞く。

 さて、ブロンド・ジョークと一概に言っても、その63%は女性が主人公で、男性を扱ったものは5%にすぎない。これからも分かる通り、ブロンド・ジョークの女性主人公は間抜けのうえに「セクシーで好色」という要素も加味されている。従って、ブロンド・ジョークが男性には好まれるのは当然だが、金髪ではない女性にも人気があるのも小話的で面白い。こんなブロンド・ジョークの故事来歴を散々調べてみたが、思わず「膝を打つ」解説は、本場のアメリカにもなかった。

そんな時、ヒッチコック・ブロンドという女優たちがいたことを知った。ヒッチコックは彼の映画で、処女雪の清純さとは正反対の冷たい「血のしたたる足跡を残してきた悪女」的金髪美女(グレース・ケリー、キム・ノバクが演じた)のイメージを作りあげた。これと同じ構図で、名もないアメリカの小話愛好者たちが作り上げたのが、ジョーク・ブロンドなのではないのか?この構図も金髪美女という外見からはうかがい知れない、「間抜けのうえにセクシーで好色」という意外性がいかにも小話的なのである。彼女たちはヒッチコック・ブロンドの陰に対して、陽であるところが良い。この役柄にぴったりだったのが、セクシーだが頭も良かったマリリン・モンローだった。
たかが小話、されど小話っていうことでしょうか?(まえがき終わり)


          アメリカ小話「俺の犬を返してくれ!」
 キャッシーは常日頃、金髪女性には知性のかけらもないと侮辱し、バカ扱いする下品な金髪小話に大喜びする男たちにほとほとうんざりしていた。
そこで、キャッシーは思い切ってイメージ・チェンジをする決心をし、金髪を黒く染めた。

その週末、彼女は気分転換しようと郊外にドライブに出かけた。
広い草原を走っていると、突然多数の羊の群れが道路を横断し始めた。

キャッシーは車を止めて下車すると、羊を誘導している羊飼いに話しかけた。
「ねぇ、この羊の群れに何匹いるかあたしがあてたら、1匹くれる?」とキャッシーが訊いた。

羊飼いは、当たりっこないからと考えて、直ちにOKした。

やがて「171匹だわ」とキャッシーは得意そうに言った。

ビックリ仰天した羊飼いは、「好きな羊を選んで持っていきな。」と言った。

彼女はしばらく羊たちを見回していたが、遂に気に入った1匹を見つけだした。
キャッシーは抱き上げると、背中をなぜて、目を細めていた。

それを見ると、羊飼いは彼女に近づいて、こう提案した。
「もし、俺があんたの地毛の色を当てたら、俺の羊を返してくれるかい?」

キャッシーは、「あたしは賭けに勝ったのだから、あなたにもチャンスを与えるのが公平だわ」
と言って、OKした。

すると、羊飼いは「あんたの地毛は金髪だろう。さぁ、俺の犬を返してくれ!」と言った。

お後がよろしいようで…。

 

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            大混乱のアイオワ州党員集会
brookings.institution
                       
               写真:(www.brookings.institute.com)

 2月3日、民主党によるアメリカの大統領予備選(党員集会)の最初の投票がアイオワ州で行われた。アイオワは大統領予備選挙が行われる際、最初に投票が行われることによって、人口315万の小さな州にも関わらず、全米の注目の的になる。ところが、3日はおろか、4日(水)の午後になっても、選挙結果が判明せず、全米が大混乱に陥った。原因は、州内1700ヶ所の投票所から、州民主党支部へ集票結果を送信する、アプリが機能しなかったため、電話で結果を知らせようとしたところ、あまりにも多数の通話が集中したため、電話での通話もままならず、集計は4日の深夜にずれ込む醜態となった。今年初めて採用された、PCアプリによる通信手段は、予行演習も行われなかった。結局は通じなかったのだが、中にはアプリにアクセスするPWを忘れた、という幹部もいたというから、開いた口が塞がらない。
結局、4日深夜、インターネットで71%の開票結果が発表された。ブティジェッジが26.8%、
サンダーズが25.2%、ワーレン18.4%を獲得して、非公式ながら、夫々11、11、5名の代理人を獲得したが、トータルで41名の代理人が選出されるので、まだどうなるかは分からない。
本命と言われた、バイデンは15.4%を集票したのみで、まだ代理人は獲得できていない。これらの代理人が7月の民主党大会で、11月に行われる大統領候補を選ぶのである。

3日の夜のニュースで筆者は初めて大統領候補を選ぶ、党員集会の模様を目にすることができた。これは100年前から続いている、党の大統領公認候補を選ぶ「儀式」なのである。他の大部分の州は予備選挙と言われる、日本の選挙同様の投票によって候補者を選ぶことができる。この方式によると、インターネットでも期日前投票も出来る。
だが、党員集会方式(caucusと言う)は、2月3日アイオワ州内の1700に及ぶ、決められた集会所に朝7時に集合しなければならない。多数の有権者が一堂に集まるため、学校の体育館などが集会所に選ばれる。そこで、写真のように候補者別に数か所に集まってグループを作る。その場合、15名に達しないグループは、別の候補のグループに参加できる。グループが出来ると、党支部役員がグループの人員を数えに来る。すると全員が右手を高く上げて、人数を数えてもらう。数え終わると、手を下げるから数え間違いがない。
次のステップは、黒板にグループごとの人数を書くのである。その合計を今年から採用された、アプリで民主党州支部に送信するはずだったが、アプリが機能しなかったのである。ある集会所の主任は、黒板の投票数の写真をメールで本部に送ったが、無効と言われた。

この混乱を受けて、マスコミは党員集会の時代遅れを批判して予備選挙方式に変えろ、と主張している。ところが、それが出来ない(したくない)事情がある。それは予備選に変えると、アイオワ州民の誇りである、大統領予備選の最初の党員集会であることを断念することになるからである。
何故ならば、翌週の10日に予備選を行う予定のニューハンプシャー州は州法によって、他の如何なる州もニューハンプシャー州予備選の少なくとも7日後まで、予備選を実施してはならない、と定めているからである。だから、後発のアイオワは「全米最初」を狙って党員集会(caucus)を開くことにしたのだ。

大昔からの伝統である、このウィークデイの早朝からの儀式のために少なくとも2時間は束縛されることを嫌う人も多い。党員集会に集まるのは、女性が過半数なのは、この所為もあるのだろう。
州支部の青年たちは、集会所に集まる以外に、携帯かメールでも党員集会に参加できるよう提案したが、集会に固執する民主党支部から拒否されている。
この21世紀の世に偏屈な誇りは忘れて、他のほとんどの州が実施している、予備選挙方式に変更することが望まれるのだが、あの辺りの白人たちは伝統の変更を嫌う頑固者が多いから、どうなることか。 (終わり)

 

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