「神父さまはマーケティングを分かっとらん」
写真:https://www/accidentaltalmudist.org/
【蛇足的まえがき】
この小話は国境を越えて人気がある定番小話です。主役は神父ではなく、ユダヤ人であります。マーケティングとは一言で言うと、「売れる仕組みを作ること」だそうですが、この技術に長けているのはユダヤ人ですね。例えば、ある暑い中東の国のハイウエイ休憩所で「飲料水」を売って繁盛しているユダヤ人がいます。すると、彼は同郷の若者を雇って、隣で「ネクタイ」を売らせるのです。「この糞暑いところでネクタイ?」と思うのは素人。ユダヤ人は水売場に「ネクタイ着用のお客のみに売ります」と案内を出すのです。すると、お客さんは文句だらだらでも、ネクタイを買わざるを得ないのであります。これがユダヤ式マーケティングというものです。
さて、小話の舞台はバチカン。ユダヤ人たちのマーケティング手法をお楽しみください。
(テキサス無宿記)
一笑一若・アメリカ小話「神父さまはマーケティングを分かっとらん」
バチカンのサン・ピエトロ大聖堂の前で二人の男が物乞いをしていた。
右側の物乞いは胸に大きな十字架を下げ、左側の物乞いは大きなダビデの星(ユダヤ教徒を表わす)が描かれたカンを前においていた。
サン・ピエトロを訪れる善男善女は、左側のユダヤ人物乞いをにらみ付け、右側の十字架の物乞いにお金を恵むので、彼のカンからはお札と硬貨が溢れ出ていた。
やがて、二人の乞食のそばを通りかかった神父さまは、両人の甚だしい違いに気付き、ユダヤ人物乞いに近づいた。
「失礼ですが、あなたはここが世界のカトリック教会の大本山であることを理解していますか? ダビデの星を付けたカンを持ってここで物乞いなどしてはいけません」と言った。
「見てくれ、誰が我々にマーケティングについて講釈しているかを。この神父はマーケッティングを分かっとらん。河岸をかえようぜ、相棒!」
と言うと、二人して十字架の物乞いが得たお金の入ったカンの中身を二つに分けて袋に入れると、両人は夫々分け前を担いで大聖堂を後にした。
お後がよろしいようで……。